2011/07/07

IN THIS WORLD










「IN THIS WORLD」を観た。
この映画はフィクションではあるが
2000年6月に
イギリスのドーバー港に
不法入国を試みた中国人58名が
コンテナ内で酸欠死するという
実際の報道に衝撃を受けた
Michael Winterbottom(マイケル・ウィンターボトム)監督が
難民問題に取り組んだ
ドキュメントタッチのRoad movieだ。

マイケル・ウィンターボトム監督は
小型デジタルカメラを用いて
初めて故郷を出て、
未知なる旅を体験する素人のアフガン人、
ジャマールとエナヤットの体感を
まるで共有するような視線で
旅路を追い続けている。



1979年のソ連軍侵攻以来、
アフガニスタンから流出した
難民の総数はなんと700万人。
その中でも圧倒的な数の難民を抱える
隣国パキスタン北西辺境州の州都ペシャワールの
アフガン難民キャンプから物語は始まる。

15歳のジャマールは
シャムシャトー難民キャンプで生まれ育ち、
1日1ドルにも満たない賃金の
レンガ工場で働いていた。
2002年2月、
20代の青年エナヤットが父親の勧めで
親戚の暮らすロンドンへと旅立つことになり、
英語が話せる従弟のジャマールも
その危険な陸路の旅に同行することとなる。

パキスタンからロンドンへの
密入国、密出国を繰り返す危険な旅。
密入国業者、
得体の知れない「人の運び屋」、
国境警備隊、検問所、雪山での銃撃、
狭いコンテナでの40時間。

国境を通過し、
その国での滞在において
公式な書類を所持しない二人の旅路、
パキスタンから
イラン~トルコ~イタリア~フランスを経由して
イギリスにたどり着くまでには
想像を超えた難関や試練が待ちかまえる。



陸路の旅というのは
パスポートとヴィザを所持していても
国境を越える際には
緊張感が高まるものだ。
特に政情不安な国への出入国は尚更だ。
警察車両、検問所を見ただけで
国家権力に対する負のイメージが
不安の影を色濃くする。
目の前にしたその人間の心持ち一つで
金品を奪われるようなことも
実際に経験したこともある。

国境までの途中で
無理矢理バスを下ろされて
警察官に金を要求され断り
警察署に連れて行かれたことや
国境を越えた瞬間に
匂いや風景が一変したことなどを
久しぶりに想い出した。



「IN THIS WORLD」は
2003年第53回ベルリン国際映画祭にて
金熊賞、エキュメニック賞、ピースフィルム賞を受賞。
製作、全英配給会社はBBC。
映画完成後、ジャマール役を演じた
ジャマール・ウディン・トラビは撮影用ビザを使い、
実際にロンドンへ単身亡命した。
彼の難民保護申請は
イギリス政府によって却下されたが、
特例として十八歳の誕生日まで
ロンドン滞在を許可されたという。











(More Day Most Accordより)









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